フェラは売春にならない?金銭を払っても違法ではないのか|売春防止法の境界線

出会い系で知り合った成人男女が、「お金を払うからフェラをしてほしい」と合意して会う。

一般的な感覚では、これも十分に「売春っぽい」と感じるだろう。ところが、日本の法律をそのまま読むと、少し意外な境界線が見えてくる。

金銭のやり取りがあっても、フェラや手淫などだけであれば、原則として売春防止法が定義する「売春」には入らない。

もちろん、「だから何をしても合法」という話ではない。今回は、この妙な線引きを現行法から観測してみる。

売春防止法がいう「売春」は意外と狭い

売春防止法第2条では、売春を「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義している。

ポイントになるのは、「性的な行為」ではなく「性交」と書かれていることだ。

つまり、金銭を受け取ったことだけで売春になるわけではない。

「対価がある」「不特定の相手である」に加えて、法律上の意味での「性交」が必要になる。

フェラや手淫は「性交類似行為」になる

ではフェラは何なのか。

法律の世界では、口淫や手淫などは「性交類似行為」として扱われる場面がある。警察庁も、児童買春関係の法令解釈では、性交類似行為の例として手淫や口淫を挙げている。

ところが、売春防止法第2条には「性交類似行為」という言葉が入っていない。

このため、成人同士が金銭の対価としてフェラや手淫などを行ったとしても、それだけなら売春防止法上の「売春」には原則として該当しないという、少々奇妙な結果になる。

刑法ではフェラをかなり重く扱うのに、売春防止法では違う

さらに興味深いのが刑法との違いだ。

現在の刑法177条の不同意性交等罪では、性交だけでなく、肛門性交や口腔性交なども対象になる。つまり、本人の同意なく口腔性交を行えば、単なる軽い「お触り」のような扱いでは済まない。

一方、売春防止法は現在も「性交」という狭い定義を維持している。

実際、2026年5月の衆議院法務委員会でも、売春防止法では性交類似行為が対象になっていないことが議論された。政府側も、刑法の性犯罪規定と売春防止法では法律の目的が異なることなどを説明している。

法律が作られた時代や目的の違いが、そのまま現在まで残っているわけだ。

では「金を払ってフェラ」は合法なのか?

ここは言い方に注意したほうがいい。

「売春防止法上の売春に該当しない」ことと、「あらゆる法律上まったく問題がない」ことは別である。

たとえば、相手が18歳未満なら事情は完全に変わる。

児童買春・児童ポルノ禁止法では、18歳未満を「児童」とし、対価を与えて性交類似行為をしたり、性的な目的で性器等を触ったり触らせたりする行為まで「児童買春」の範囲に含めている。

つまり18歳未満の場合は「挿入していないから大丈夫」は通用しない。

車内ならさらに別の問題が出てくる

もう一つ注意したいのが場所だ。

たとえば成人同士が合意して車内で性的な行為をしていたとしても、道路沿いや駐車場などで外部の人から見える状態なら、公然わいせつの問題が出てくる可能性がある。

刑法174条は「公然とわいせつな行為」を処罰対象としている。車は個人所有の空間ではあるが、窓越しに不特定・多数の人が認識できるような状況なら、「車内だから完全な私的空間」と単純には言えない。

また、相手の同意を超える行為をすれば、当然ながら別の性犯罪が問題になる。金銭を払ったことは、何でも自由にしていいという同意にはならない。

出会い系を使ったこと自体が違法になるわけではない

成人同士が出会い系サービスを利用して知り合った、というだけで犯罪になるわけでもない。

ただし、出会い系サイト規制法は児童の保護を強く目的としており、18歳未満を相手とする性交等の誘引や、金品を示して交際を求める書き込みなどを規制している。

したがって、「相手が成人であること」は、この種の話を考えるうえで非常に大きな前提条件になる。

なぜこんな境界線になっているのか

ここまで見ると、妙な感じがする。

同じ1万円を払ったとしても、成人相手の口淫なら売春防止法上の「売春」ではなく、性交になれば同法の定義に入る。

人間の感覚からすると、かなり細い線である。

しかし法律は、「なんとなく性的だから」という感覚ではなく、条文に書かれた要件によって判断される。

そして現在の売春防止法は、まさに「性交」という一本の線を境界にしている。

観測結果

「お金を払って性的なことをした=すべて売春」と考えている人は多いかもしれない。

しかし現行の売春防止法を見る限り、そう単純ではない。

成人同士・合意あり・性交なしで、口淫や手淫などに対価を払ったケースは、少なくとも売春防止法第2条の「売春」からは外れるのが基本的な整理になる。

その一方で、18歳未満、公然と見える場所、同意のない行為、営業としての反復継続、周旋などが加われば、児童買春法、刑法、風営法、条例その他の別の規制が問題になる可能性がある。

「フェラなら合法」という話ではない。

正確には、「日本の売春防止法が定義する売春は、一般人が想像する“有料の性的サービス”よりかなり狭い」のである。

法律と世間の感覚。その隙間を覗いてみると、日本の性風俗がなぜ独特の形で発達してきたのかも、少し見えてくる。

※本稿は2026年8月時点の法令をもとにした一般的な解説です。個別の行為についての適法性は、場所・年齢・勧誘方法・営業性・具体的な行為などによって判断が変わります。

このジャンル、奥が深い。他人との性的な興奮を味わえる行為って、自由に見えて実はどこかに年齢、場所、同意、金銭、法律の縛りがある。まあ当然といえば当然だが、調べるほど「好きにやればいい世界」ではないんだよね。

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