出会い系やSNSを眺めていると、ときどき「場所あり」「自宅OK」といった募集を見かける。
つまり、ホテルへ行くのではなく、女性自身の部屋に相手を呼ぶということだ。
さらに気になるのが、その人物が生活保護を受給していた場合である。
自宅に客を呼び、現金を受け取り、その収入を申告しなかったら、福祉事務所はどこまで把握できるのだろうか。
今回は売春そのものというより、「現金収入と生活保護制度の死角」という部分を観測してみる。
なお、「生活保護を受けている女性には自宅売春をする人が多い」と示す公的統計は確認できない。特定の事例を生活保護受給者全体へ広げて考えるべきではないことは、最初に断っておきたい。

生活保護でも、収入があれば申告する
まず基本的なところから確認しておこう。
生活保護は「働いてはいけない制度」ではない。働いて収入を得ること自体は可能であり、その収入などを考慮したうえで、最低生活費との差額が保護費として支給される仕組みになっている。
そして生活保護法第61条では、収入など生計の状況に変動があった場合、速やかに届け出ることが定められている。厚生労働省も、生活保護受給中は収入状況を申告すると説明している。
さらに厚生労働省の資料では、最低生活の維持に充てることができる金品については原則として収入として認定し、少額であっても申告が必要という考え方が示されている。
つまり、「銀行振込ではなく現金でもらったから関係ない」という話にはならない。
実際、不正受給で多いのは「収入を言わない」ケース
生活保護の不正受給そのものは、決して架空の問題ではない。
厚生労働省が公表している令和6年度の生活保護法第78条の適用状況を見ると、不正受給は25,907件、金額は約114億円となっている。
少し以前の令和2年度の内訳では、「稼働収入の無申告」が49.5%、「過少申告」が11.1%だった。合わせれば約6割である。
ただし、この統計から「売春による現金収入が多い」と判断することはできない。アルバイト、日雇い、自営業など、さまざまな収入が含まれているからだ。
それでも、収入を得ながら申告しないという行為そのものが、不正受給の典型的なパターンの一つであることは分かる。

では、現金手渡しならバレないのか?
ここが一番気になるところだ。
給与なら会社側に記録が残る。銀行振込なら口座に痕跡が残る。しかし、個人間で数千円、数万円を現金で受け渡し、そのまま生活費として使ってしまえば、確かに機械的には見つけにくい。
特に、日雇いや事業収入については、厚生労働省の実務資料でも本人からの申告が中心になるケースが示されている。
だからといって、「現金なら福祉事務所には絶対分からない」というわけでもない。
生活保護法第29条では、必要がある場合、福祉事務所などは官公署や金融機関、雇用主その他の関係者に資料や報告を求めることができる。
ケースワーカーによる訪問、本人への聞き取り、生活状況との不自然な食い違い、第三者からの情報などから疑問が生まれることも考えられる。
要するに、現金商売は発見しにくい面はあっても、「現金なら安全」という保証などない。
バレたら「もらった分を返せば終わり」とも限らない
不正な手段で生活保護を受けたと認定された場合、生活保護法第78条によって、その費用の全部または一部を徴収されることがある。
さらに現在の条文では、その徴収額に最大40%を上乗せした金額まで徴収できる仕組みになっている。
したがって、「月に何万円か現金で稼いでいたが申告しなかった」という話は、単なる小遣い稼ぎでは済まなくなる可能性がある。

そもそも出会い系で売春相手を募集する行為にも問題がある
もう一つ切り離せないのが売春防止法である。
同法では、対価を受け、または受ける約束で、不特定の相手と性交することを「売春」と定義している。
さらに第5条では、公衆の目に触れる方法による勧誘や、広告などに類似する方法による誘引を処罰対象としている。ネット上での公開募集も、その内容や方法によっては問題となり得る。
よく「売春そのものは罰則がないから大丈夫」という話だけが一人歩きするが、実際には勧誘、周旋、場所の提供など周辺行為には別の処罰規定が存在する。
自宅なら「置屋」になるのか?
ここは少し注意が必要だ。
女性が自分自身の客を自分の部屋へ呼んでいるからといって、それだけで昔ながらの「置屋」や「ちょんの間」と法律上同じものになるわけではない。
一方、他人に売春させるため場所を提供した場合は話が変わる。売春防止法第11条には、売春が行われると知りながら場所を提供する行為を処罰する規定があり、それを業として行う場合にはさらに重い規定が置かれている。
つまり、本人一人の自宅売春と、部屋を他人にも使わせて営業拠点のようにする行為は分けて考えた方がいい。

それより怖いのは「自宅を知られる」ことではないか
制度や法律以前に、個人的にはここが一番理解しにくい。
ホテルなら取引が終わればその場を離れられる。しかし自宅へ呼べば、相手は住所を知る。
本名を知られなくても、住んでいる建物と部屋番号は知られてしまう。
一度来た男が再び訪ねてくるかもしれない。別の客と鉢合わせするかもしれない。金銭トラブルになるかもしれない。ストーカー化する可能性もある。
しかも集合住宅なら、頻繁に知らない男性が出入りすることで近隣住民との問題に発展する可能性まである。
ホテル代を節約できるというメリットと引き換えに、自分の生活拠点そのものを不特定の相手へ公開する。
金銭面だけで考えれば合理的に見えても、防犯面ではかなり大きなリスクを抱える選択である。
観測結果――現金には死角がある。しかし無敵ではない
生活保護制度から見ると、現金手渡しの収入は確かに把握しにくい。
会社から給与が振り込まれる場合と比べれば、行政側に自動的な記録が届くわけではない収入も存在する。
しかし、だからといって申告義務が消えるわけではない。
生活保護は「収入があること」が即座に悪いのではなく、収入を申告し、そのうえで必要な保護額を決める制度である。
問題になるのは、収入を得ながら意図的に隠し、その分まで保護費を受け取ることだ。
そして自宅での売春となれば、福祉制度上の問題だけでは終わらない。ネット上での募集方法、売春防止法との関係、賃貸住宅の利用方法、近隣住民への影響、そして何より本人の安全という複数の問題が一度に絡んでくる。
「現金ならバレない」という発想だけで見ると、肝心な部分を見落としているように思える。
俺が思った
現金なら記録が残りにくい。自宅ならホテル代もかからない。そんな計算なのかもしれない。
しかし俺なら、数千円のために見知らぬ男へ自宅住所を公開する方がよほど理解できない。